睡眠時無呼吸症候群と夜間頻尿

2025.08.02

開業医になって最も認識が変わったところになります。

私は排尿機能学会専門医でもありますから、夜間頻尿の場合には睡眠時無呼吸症候群を除外することも必要であることの認識はありました。実際に開業をして、簡易ポリソノグラフィ(PSG)を導入してみました。検査をしてみると思った以上にCPAP(持続陽圧呼吸療法)の適応となる方が多いので、驚きました。ということで、今回は睡眠時無呼吸症候群と夜間頻尿についてまとめたいと思います。

まずは恒例の有名人では睡眠時無呼吸症候群であることを公表しているのが、
福山雅治さん、パパイヤ鈴木さん、おぎやはぎの矢作さん、クロちゃん、太田光、光代夫妻などがいます。クロちゃん、パパイヤ鈴木さんはそうかもと思いますが、まさか福山雅治さんもとは。しかも福山雅治さんはCPAPも使用しており『非常に気持ちがいい』と睡眠の改善を実感されているようです。


睡眠時無呼吸症候群が夜間頻尿を起こす理由は、無呼吸時に胸腔内圧が低下し、静脈還流の増加となる為、心臓に戻ってくる血液量と圧力が増加します。その心臓負荷により体液が多すぎると体が勘違いし、心房組織から心房性ナトリウム利尿ホルモンが放出されます。利尿ホルモンは尿産生を増加させる働きがあるので、夜間頻尿の可能性を高めると考えられています。また、睡眠障害により高血圧症や糖尿病を合併する率が高いために夜間多尿を起こす可能性もあります。

本来、眠っている間はリラックスの神経である「副交感神経」が優位となっており尿意を感じにくい為、膀胱にたくさん尿を溜めることができるのですが、睡眠時無呼吸症候群では無呼吸状態によって血液中の酸素濃度が低下し、血圧や心拍数の上昇を招くことで交感神経が優位となるため、膀胱が収縮しやすく、尿意を感じやすい状態になるのです。よって、睡眠時無呼吸症候群の方は夜間頻尿の症状が出やすくなると報告されています。と、多くのホームページで同様な記載があります。

どうしても睡眠時無呼吸症候群というと、「肥満体形」、「いびきをよくかく」をイメージしてしまいます。当院開業後にやせているけど夜間頻尿の3人の方に睡眠時無呼吸症候群の検査をしてみました。最初の方は重症の睡眠時無呼吸症候群の診断がついてしまいました。2人目の方はやせ型でしたが、同様に重症の睡眠時無呼吸症候群の診断がつき、CPAP(持続陽圧呼吸療法)を開始。3人目の方は中等症の睡眠時無呼吸症候群の診断となりました。しかもこの3人とも自分が睡眠時無呼吸症候群とは思っておらず、テレビ放送後でもあり、検査があるならやってみたいという方達でした。いびきの自覚はほとんどありませんでした。いずれの方もこれまで過活動膀胱のや夜間頻尿の薬を使っており、薬での改善効果が不十分で困っていたところでした。CPAPを開始することで夜間の排尿回数が半分になって、しっかり眠れるようになったとのことです。

確かに夜間頻尿と睡眠時無呼吸症候群は有名ですし、当院にも多くの夜間頻尿の患者様がいらっしゃいます。内服薬で改善しない夜間頻尿は睡眠時無呼吸症候群を疑い検査を進めていきたいと思っております。本来なら、夜間頻尿の患者様が来られた場合、睡眠時無呼吸症候群を除外して、治療を開始するのが、ガイドラインに則った治療指針ではあるのですが、検査の機械の問題でまず治療を先行させたいと思います。

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