GSM(Genitourinary syndrome Menopause)閉経関連泌尿生殖器症候群
繰り返す膀胱炎でお困りではありませんか?
女性は思春期の生理・月経から始まり、妊活、妊娠期・産後、プレ更年期・更年期と様々な年代で特有の課題を抱えています。
近年ではこれらの女性(Female)特有の問題に対して解決するための技術(technology)やケア商品(care)が開発されています。それぞれをフェムテック(Femtech)、フェムケア(Femcare)と呼び、注目されております(当院でもいくつか採用しております。腹圧性尿失禁に対する骨盤底筋トレーニングチェアはその一つとなります)。
フェムテックが注目される理由として、社会全体として女性の活躍を推進させるというのがあると思われます。また、女性の健康問題が社会的な損失にもなっていることが報告されており、その金額が日本国内で7000億円に上るともされています。さらにはSNSの発達で女性の悩みが可視化され、共有されてきていることもあろうと思います。泌尿器科の中でも女性泌尿器科が一つのキーワードになりつつあります(男性泌尿器科がキーワードになることはないんですが、、)。
GSMは表題にありますが、閉経関連泌尿生殖器症候群の略称です(略称はもちろんわかりにくいですが、漢字で書いてもイメージがつきにくいですよね)。2014年米国の学会で提唱され、徐々に認知が広がってきております。もう少し言うと、閉経後の女性におきる泌尿器と生殖器の不快な症状を指します。以前は萎縮性膣炎や老人性膣炎ともいわれておりました。病名が変わるとイメージがずいぶん変わりますよね。
GSMの原因
まずは加齢とともにエストロゲンが低下します。すると膣に含まれる水分が減少し、潤いを失うことになります。また、コラーゲン繊維が減少することで膣の粘膜の形態と分泌低下が起こります。これらが原因となり、膣を正常に保つ乳酸桿菌が減少します。乳酸桿菌は酸性物質を作り出しており、膣内あるいは外陰部を酸性に維持しております。中性からアルカリ性になってくると、無菌状態か他の雑菌類が繁殖を来しやすくなります。

GSMの問題は慢性かつ進行性であることです。閉経後の50%で何らかの症状があるとの方向もあります。症状は3つに分類されます。膣症状(におい、乾燥、陰部の痛み)、性交痛(ペニス挿入時の痛み)、泌尿器症状(繰り返す膀胱炎、頻尿)。Ohtaらは40~90歳の女性の症状について報告しており、もっとも多いのが尿漏れ(21.7%)、次いで性交痛(20.6%)、頻尿(20%)と上位3つのうち2つが泌尿器科症状でした。
ただこれらの症状は従来の過活動膀胱や腹圧性尿失禁などでも認めるものであります。純粋にGSM(エストロゲン低下)からくるのかははっきりと区別されているわけではありません。今後の研究で少しずつ分かってくるものと思います。
診断ですが、外陰部の診察で乾燥して、赤くただれている、尿道カルンケルを認める、膣の入り口が狭いなどの症状を確認することとされています。
この疾患は日ごろのケアが大切とされています。
基本は保湿。陰部の洗いすぎには要注意です。多くのボディソープは弱アルカリ性となっています。その分泡立ちがよく、きれいに洗えるのですっきりする感じもあります。
しかし、必要なものまで洗い流してしまうので、弱酸性のボディソープで優しく洗うのがよいでしょう。そして入浴後には保湿ケアをしてやると良いです。外陰部の皮膚は薄く、顔と同等のケアをしてあげる必要があることを覚えておいてください。

治療としては、症状をとるための薬物治療。女性ホルモンの補充、膣レーザーで膣や尿道の粘膜の萎縮を改善させる。当院では膣レーザーなどの治療器具を導入しておりません。ケア商品の取り扱いはしておりますので、気になる方は問い合わせください。